2月27日 アユン川ラフティング
朝、8時少し前に起きて準備をし、荷物を持って朝食を食べに行った。ここもバイキング形式の朝食で、おかゆやみそ汁まであるので、つい大量に食べてしまう。ロビーを出ると、既に迎えの車がきていたので乗り込んだ。途中2か所のホテルに寄って、人を拾いながら目的地へ向かうのだ。車は我々2人の他に、遺伝学者の「メンデル(グレゴール・ヨハン・メンデル/オーストリア)」にそっくりなデンマーク人とその奥さん、そして日本人の各2カップル、合計6人を乗せて乗り場へと向かった。
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我々の車以外にも大勢の客が集まっており、他の観光地と比較すると欧米人が断然多い。「チコボーイ」という名のガイドが、我々の乗るボートの担当となったが、彼は日本語があまり話せず、なまりの強い英語で話すため、かえって本当の英語圏の人にはわかりづらいようである。 ひととおり彼が簡単な説明と指示を終えたところ、デンマーク人奥さんがダンナ河野に近づいてきてこう言った、「ねぇちょっと、今彼は何を取りに行けと言ったの?」。ダンナ河野は「たぶんPaddle(パドル:オールのこと)じゃないかな・・・」と答えながら、身振り手振りで漕ぎ漕ぎすると、彼女はようやく「Oh !」とか言いながら納得したようだった。チコボーイの発音では「ぱろぉ」としか聞こえないからだが、何で日本人が欧米人に英語を通訳せねばならんのだ? |
ともかくここで無事に「パドル」を受け取り、ヘルメットとライフジャケットを装着して川へと降りていった。しかし、出発地点へたどり着くまでには、急な石段を509段も降りなければならないという試練が待ち受けているのである。途中チコボーイ(右写真)は突然、「バリのMusicを見たいか?」などと意味不明なことを言うのでポカンとしていると、彼はおもむろに足元の草に向かって「Sleep!」と呪文を唱えながら指をさす。すると草は、葉をたたんで眠るようにたれ下がった。そう、これは日本で言うオジギソウであり、葉に触れると閉じて葉柄を垂れるのだ。どうやら彼は「バリのマジックを見たいか?」といいたかったらしいが、なまりが強いためMagicがMusicに聞こえたのである。我々も彼のMagicをマネして日本語で「眠れー!」と言いながら指差して、しばし遊ぶ。
その後、「カシン!カシン!」と断続的な金属音のする地点に到着した。チコボーイが「これは川から電気を使わずに水を汲み上げるポンプの音である」と言う。ダンナ河野が「Man
power(人力)でやってるのか?」と聞くと、「そうだ、Magic power ではないのだ!」と、あくまでギャグで返す。彼は彼なりに長い山道を退屈させないよう、気をつかっているのであった。
何とか汗だくになって船着場に着くと、冷たいミネラルウォーターが用意されていた。水タンクのそばには、木の葉を器用に円錐状に丸めて作ったコップが重ねてあって、これで水を飲むのだ。これならゴミにもならないし、何ともエコロジーだ。ところで、チコボーイは何人もいるガイドの中でもリーダー的な存在らしく、お客全員を集めて注意事項の説明を始めた。「ここでは川に落ちることは日常茶飯事だが、今までにシリアスなプロブレムは一度もないのである」との説明に、一同ひと安心。 |
いざ出発! ダンナ河野たちは右舷の1番目と2番目に座り、デンマーク人夫婦が左舷の1番目と2番目、日本人カップルは3番目の左右、最後尾にチコボーイが座った。操船は基本的に我々が行うが、ボートの最後尾でガイドが操船の指示を出す。指示用語は次の5つからなるそうだ。
1.Row up/前こぎ 2.Back/後ろこぎ 3.Boom boom/頭を低く下げろ 4.Up/パドルを立てろ 5.Stop/停止 チコボーイはその指示用語を日本語ごちゃ混ぜで使い、「前こぎ〜!」の一声で船は発進した。だが、我々のこぎ方が足りないので、すぐさま「ハッタラケ〜!(働け)」とハッパをかけられる。まもなく最初の瀬に突入し、激しい衝撃とともに大量の水が襲ってきた。瀬はいくつも連続しており、足をボートの底と気室との間にしっかりさし込んでおかないと、たちまち船から投げ出されそうだ。崖に近づくとすかさず「Boom boom!」と指示が飛ぶので、頭を木や岩にぶつけないように、体を伏せる。 しばらく行くと、女の子ばかり6人が乗っているボートがそばを通った。するとニョーボ河野がすれ違いざまパドルで水面を叩き、彼女らに水をかけて先制攻撃を行った。そして、この奇襲が発端となり、激しい水掛けバトルが始まったのである。そんな騒ぎの中、むこうのボートのガイド君は、何くわぬ顔で自分のヘルメットを脱いだかと思うと、それに川の水をしこたま汲んだ。そして背後から自分のボートの女の子に頭からどぼどぼと大量の水をかけて、キャーキャー言わせている。メンデル似のデンマーク人ダンナは最初はクールな顔で笑っていたが、やがて自分にも火(水?)の粉が降りかかったと見え、まもなく積極的に攻撃に加わった。こうして無益な報復合戦が終わった頃には、双方とも一人残らずずぶ濡れとなっていたのである。 |
戦いは終わったが平和はまだ訪れない。我々のボートはダンナ河野のこぐ力が強いのか、それともみんながサボっているのか、いつも左へ左へと旋回してしまうのだ。従って、瀬には必ず横向きや後ろ向きで突入するため、岩に激突したり、浅瀬に乗り上げたりの連続である。転覆しないのが不思議なくらいだ。さらに下っていくと、地元の漁師が川に電流を流して魚を捕っていた。日本でいうところの「ビリ」という漁法(注:日本では違法)である。バリ島ではポンプは人力なのに、川漁は電化されているのだ。途中一箇所で上陸し、写真を撮ったりして休憩した。しかしよく見ると、みんな早く出発したくてうずうずしてるようだ。 流れの静かなところにさしかかった。ようやく美しい緑を眺め、鳥の声に耳をかたむける余裕が出てきた。しかしそれもつかの間、すぐに急流があって大あわて。中には、川に転落したり自分から飛び込んだりして無人になったボートもあり、岸からボートを追いかけていた。いや〜スリルを満喫できました。こうして、あっという間の11km、1時間30分の行程を終え最終地点へ到着したのである。 |
ここでは係の人が我々のライフジャケットやヘルメットなどを回収し、バスタオルを手渡してくれた。見ていると彼らは回収したものを大きなかごに入れ、それを頭の上に乗せて200段の石段を黙々と登っていく。ゴムボートも同様に空気を抜かれて運ばれていくが、大変な重さのはずだ。体力のない我々は見ているだけで、足にきてしまいそう。
建物の中に入ると、バイキング形式のインドネシア料理の列に並ぶ。ポークカリーが美味しくて、思わずおかわりをしてしまう。食事を済ませ一息ついて、石段を登り始めた。石段の途中には地元の民芸品の売り子がたくさんいて、木彫りの像などを観光客に売ろうとがんばっている。こちらは疲れててそんな余裕はないので、No thank you.とか I don't have any money.とかなんとか言ってひたすら200段を登り、迎えの車を待つ建物までたどりついた。ここには更衣室やトイレがあり、途中でプロのカメラマンが撮った、我々のラフティング中の写真を売っている。写真を受け取り、車でホテルへと戻った。 部屋へ戻るとすぐスパに予約を入れ、2時から行くことにした。それまでの間、ダンナ河野は屋外の長椅子に寝転がり、ニョーボ河野もやっとのんびりする時間ができて、プライベートプールにつかって幸せそうな顔をしている。ここはあちこち観光せずに、のんびりするだけでも十分楽しい所なので、日程に余裕を持って来るのがおすすめだ。 |
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